イルカの長期飼育・繁殖の研究で、地域活性化を推進する。
2017年7月4日 津久見市民会館「大ホール」にて開催されました。
つくみイルカ研究サミットは、津久見市、つくみイルカ島、そしてイルカを研究する大学の官民学連携によるイルカの長期飼育について研究をしています。
各地の施設、自治体、大学が連携し「学習や教育、学術研究、種の保存、レクリエーションなどの諸活動」を地域活性化に連動した新しい社会貢献チャレンジにしていきます。
今後、このような連携を強化し、人間社会がイルカとの共生関係をさらに発展させ、海とつながる子どもたちの未来を豊かにすることを目的とします。
発表内容
イルカ研究サミットinつくみ(7月4日)
まず、澤修作飼育員(うみたま体験パークつくみイルカ島鯨類飼育担当)より「イルカの赤ちゃん誕生!つくみイルカ島バンドウイルカ繁殖の軌跡」をテーマに状況報告を行っていただきました。母イルカのサキの妊娠から出産に至るまでの過程を、数値を基に解説され、最後に子イルカが母親と飛び上がるほどに成長した現在の様子について報告していただきました。
次に、瀬川太雄獣医学博士(三重大学大学院生物資源学研究科)より、「つくみイルカ島のイルカから乳酸菌を分離する」をテーマに研究事例発表を行っていただきました。この研究は、腸内細菌が宿主の免疫力を制御することで、宿主の健康状態や寿命に大きく関与しているという考えから、腸内細菌叢を改善することでイルカをより健康的に長生きさせることができるのではないかと考えられたことから始まりました。イルカの腸内に常在する乳酸菌は腸内細菌に対して抗菌活性を持っていることから、イルカの腸内細菌叢の改善及び養殖業における抗生物質の代替品となっていくことが今後の研究に期待されています。
また、基調講演として木谷秀勝教授(山口大学教育学部付属教育実践総合センター)より「下関市イルカふれあい体験と自閉症児への地域支援」についてお話いただきました。これは、水族館をリフレッシュできる「心理的環境」として、下関市在住の自閉症児を対象に行われたプログラムで、段階を追ってイルカと触れ合うことでセラピー効果を期待する取組です。新たなことに挑戦する意欲の向上といった直接的効果だけでなく、毎年参加することで1年間の成長が確認できる時間と空間を持つことができるといった間接的効果も期待されることで、水族館の存在意義を地域支援に対して大きく示すことができると話されていました。
次に、青森県むつ市、和歌山県太地町、そして津久見市の取組事例の発表を受けて、「イルカが地域を元気にする!」をテーマに地域活性にどのように取り組んでいくのかの意見交換を行いました。出された意見としては、以下の通りです。
・水産庁 諸貫秀樹漁業交渉官(資源管理部国際課):全国各地で地域に合ったイルカの研究ができるので、資源管理をしっかりと行った支援企画を効果的に行い、生態系を知ってもらうことで鯨類に対する誤解を解消していく必要がある。
・九州経済産業局 竹内一雄参事官(地域経済部地域創生担当):イルカとの触れ合いは地域創生にとって重要なテーマであるので、継続的な情報発信や開催をしてほしい。
・大分県農林水産部 村井尚理事:イルカの生態調査を行う部署があるので連携して、研究機関のネットワークを活用しながら、津久見が研究の拠点となっていってほしい。
・木谷教授:地域、そして子どもたちに合ったペースやリズムを大事にしながら、イルカを生かすことを考えてほしい。
・神戸市立須磨海浜水族園 長谷川修平副園長:イルカは地域活性の起爆剤になる。イルカについての楽しく有意義な情報が各地域から発信されることで相乗効果となりうる。
最後に、川野津久見市長より、関係機関が連携することで人間社会がイルカとの共生関係をさらに発展させ、イルカによる地域の活性化に取り組み、海とつながる子どもたちの未来を豊かにすることを共同宣言として決意表明があり、閉会しました。